NSR50にCRM250のエンジンを搭載する パート2
NSR50にCRM250のエンジンを搭載して250cc登録 2台目の作業です。
今回はカウルレスのタイプを作ります。
ベース車両のNSR50とCRM250、オーナー手配です。
ベースのNSR50を全バラにします。
塗装の剥離をしてガンガン補強を入れていきます。
NSR50はフレーム剛性が高く、レースでもそのまま速いのですが、一箇所弱い部分があります。
フレームのツインチューブがあってそこは強いですね。
サブフレームとスイングアームの付く箇所、プレスの板が弱いんです。
プレス部分がボックス構造になるように、ぬかりなく補強とエンジンマウントを追加していきます。
今回のエンジンスワップではエンジンマウントの方式を大幅に変更することにします。
NSR50ノーマルのレイアウトは、エンジンはフレームに、スングアームもフレームに普通に装着。
まあ普通ですね。
ところがCRM250のレイアウトは、スイングアームのシャフトがエンジンに付いている方式。
エンジンとスイングアーム、フレームが強固に固定され、すごく剛性が高い方式なんです。
そこで思い付いたのはCRM250と同じレイアウトで、NSR50のフレームを加工してしまおうという作戦です。
メリットはエンジンが後ろ側に移動し、スプロケもスイングアームシャフトにより近くなる事。
それによりスイングアームの動作がチェーンのテンション変化に影響しにくい事。
スイングアームシャフトを太く、12パイから15パイになる事で強度と剛性が増す事。
スイングアームも剛性が高い物が装着出来る事。
逆にデメリットとしては、スイングアームをワンオフで作るしかない。
チェーンライン、フレームの加工が難しい事です。
今回はこの新しい方法で制作する事にします。
実はこの思いつきのせいで、想像以上に苦労してしまいました。
以前作ったバイクと同じにすれば作業が楽なのは分かっているのですが、
いったんアイデアが浮かんでしまうと後には戻れません。
かなりの時間を費やしてエンジン、スイングアーム、サスの位置関係を決めます。
スイングアームは5センチロングで車高調整機能付きです。
アルミ7N01材の角パイプと削り出しパーツで作りました。
この後ある程度出来上がってから補強を入れる予定です。
ラジエターの位置関係を考えます。
当初の予定ではラジエターを、フロントフォークの前にも持って来ようと考えていました。
エンジンとフロントタイヤの間にスペースは無いですから。
ラジエターはVT250の物を使います。ヘッドライトはラジエターの形に合わせてカタナの物です。
が・・どうもシックリいきません。
ところがですが、エンジンを後ろに移動できたおかげで、ラジエターが通常の位置に収まりそうなんですね。
前回作成したバイクはエンジンとフロントタイヤの間がギリギリで、
ラジエターはもちろん付かないし、チャンバーも横に振るしかありませんでした。
今回のエンジン位置変更のおかげで、チャンバーはそのまま下に振れるし、ラジエターもエンジン前に付ける事ができました。
こんな所にもエンジンマウントを変更したメリットが出てきました。
いったんバラバラにしてフレームを粉体塗装に出します。
塗装の剥離はサンドブラストで行います。
フレームを塗装に出している間エンジンの点検をします。
リードバルブが割れています。
とりあえず腰上オーバーホール。エンジンを乗せる前に点検しておいて正解でした。
いよいよ組立に入ります。
半ツヤの粉体塗装で塗られたフレームとホイールは実に良い質感の仕上がりです。
チャンバーはCADでデータを出しながら1ピースづつ溶接していきます。
薄いステンレスは強度を出す溶接が難しいので、バックシールを当てるというチタン溶接と同じ工法で行います。
オーナーが手配のタンクとカウルです。
ご自分で塗装屋にオーダーし、塗装完成後に送ってもらいました。
NSR50というと原色を使ったレーサーぽいのをイメージしますが、あえて灰色を使うところがミソですね。
仕上がってみると実に良いたたずまいです。
やっと完成。
ナンバーも正規に250登録にしてあります。
部品の調達、位置関係の設計、ワンオフのスイングアームにワンオフチャンバー、
ハーネス制作、サンドブラスト、塗装。
良い物を作ろうと思うと結構時間がかかってしまいますね。
50ccの車体に250ccのエンジンでは危険なバイクに思われますが、
きっちりと強度出して念入りに作れば普通に気持ち良く走れます。
試乗した感じ、まだセッティングが出ていない状態ですが、しっかりした剛性を感じます。
ステンレスチャンバーにチタンサイレンサーです。
CRM250のエンジンは8000回転ぐらいが最高回転ですので、チャンバーデータはあえて高回転型にせずトルク型にしました。
チャンバー太い所で110パイ。でかいですがこれぐらいは必要です。
ランポートとしての仕事はこれで終わります。
鈴鹿から東京までランポートのスタッフで配送。初めてオーナーとお会いする事になりました。
大都会の東京で道に迷い、オーナーに迎えに来てもらったところ、
乗って来られたバイクが過激にエンジンチューンされたカブ。
後は細かいセッテイングやパーツ類の変更などオーナーの手で熟成され、より良いバイクに仕上がる事でしょう。